S020 ふかいあお

Anyway

誰かが、なんかもう、最悪の夏と呟いている。

それでも、七里ガ浜の空は青く日差しは透明で、その日わたしは、今日がこの夏のてっぺんだと感じていた。海から上がってきたサーファーに向けていたカメラを動かしていたら、ふと入り込んできた横顔は、どこを見ているのか力のある目線で。

やさしさ、切なさ、凛とした強さ。時々写真に残しているうちに時は経ち、空は高くなり、空気が金色に変わっていく。

2021年、夏の終わりにはよく雨が降った。長い雨に、世の中の状況。心は浮いたり沈んだり、沈むことが長ければ、ざわつくこともある。夏の終わりに何度か会ううち、彼女の内側には深淵なる澄んだ場所があると思った。揺るがない芯のようなもの。

雨がまたひとつ、季節を先に進めていく。ずっとそこに留まってはいられない。

もう少し先には、夏とは違った光があるはずだ。       

ノミネート

酒井貴弘選出

※9月29日(水)〜10月7日(木)にレビュアーによる展示作品の審査を行いレビュアー賞及びノミネート作品が決定しました。